シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

日銀の包括的金融緩和政策の真の目的は?

日銀により10月5日に「包括的な金融緩和政策」の実施について発表されました。
今日はこの内容を精査してみたいと思います。 この記事の一番下に全文を引用しましたので、適宜参照ください。

(1)金利誘導目標の変更
これは、これまでの金利誘導目標0.1%を0〜0.1%程度にする、というものですが、名目金利上はともかく、実質金利では0.1ポイント以下の引き下げですから、本質的には僅かな金融緩和といえるでしょう。今回の利下げは無担保コール翌日物しか対象とならず、補完当座預金の適用利率に変更はなく、固定金利オペの金利も0.1%のままです。

(2)「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化
これは、06年3月に導入された考え方で、当時は
「金融政策運営に当たり、各政策委員が、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率」ということでしたが、「各政策委員が、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率」なるものがCPI(消費者物価指数)で0%でしたから、全くのデフレターゲティング政策と呼んで差し支えないものでした。
今回の場合、引用(注3)にあるように、
消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている。」
とのことですから、当時より1ポイント分マシにはなっていますが、他の先進国の狙いで見てもインフレ率と自殺数との相関でみても、インフレ率の狙いが低すぎ、「控えめなデフレターゲティング」というのが妥当なところでしょう。

さて、一番考えるべきなのが、
(3)資産買入等の基金の創設 です。
国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託ETF)、不動産投資信託J−REIT)など多様な金融資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討する(注4)(別添2)。このため、議長は、執行部に対し、資産買入等の基金の創設について具体的な検討を行い、改めて金融政策決定会合に報告するよう指示した。 』

これ、まだやるって決めてない ですよね。
百歩譲って既に実施を決めているとしても、量と質とにそれぞれ問題があります。
まず基金の大半を占めるのは金融機関への固定金利貸出(30兆円)であり、以前見たように、デフレ下では金融部門から非金融部門への資金の流れは形成されず、金融機関が国債を買うだけになっていますので、この部分は実効性は期待できません。
残る「5兆円」も、そのうち3.5兆円は短期国債か、残存期間の短い長期国債の買い入れ、ということで、もともと金融部門にカネを流しても意味が無い上に、どの道短期間で償還時期を迎える国債に限って買うという、二重に無意味なことをしています。
ですので、非金融部門にカネを流しうる真水部分はわずかに1兆円(国民1人当たり8000円程度)ということになります。 国民一人当たりわずか8000円ばかりのカネを撒くことを、今後検討すれば、デフレを脱却できるのか?  出来るわけがないのは子どもでもわかります。

では何でこんな無意味な政策を日銀は大風呂敷で打ち出したのか。
最近の野田財務大臣、海江田経済財政担当大臣のその後の発言を聞くと、どうやらおふたりとも日銀の今回の施策に十分満足されているご様子。
つまり、今回の「包括的な金融緩和政策」なるものの本当の意味は、国会審議が予定されていると言われる日銀法改正論議封じにある。 下衆の私にはそう思えます。




(以下参考引用)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
10月 5日 「包括的な金融緩和政策」の実施について(13時38分公表) (PDF, 179KB)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101005.pdf
2010年10月5日
日本銀行
「包括的な金融緩和政策」の実施について

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、金融緩和を一段と強力に推進するため、以下の3つの措置からなる包括的な金融緩和政策を実施することとした。

(1)金利誘導目標の変更(全員一致(注1))
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す(注2)
(公表後直ちに実施)。(別添1)
(2)「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化
日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」(注3)に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件とする。
(3)資産買入等の基金の創設
国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託ETF)、不動産投資信託J−REIT)など多様な金融資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討する(注4)(別添2)。このため、議長は、執行部に対し、資産買入等の基金の創設について具体的な検討を行い、改めて金融政策決定会合に報告するよう指示した。

(注1) 賛成:白川委員、山口委員、西村委員、須田委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員。
反対:なし。
(注2) 補完当座預金制度の適用利率、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの貸付利率および成長基
盤強化を支援するための資金供給の貸付利率は、引き続き、0.1%である。
(注3) 「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている。」
(注4) 須田委員は、本文中、資産買入等の基金の創設を検討するに際し、買入対象資産として、国債を検討対象とすることについて、反対した。

2.わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、海外経済の減速や為替円高による企業マインド面への影響などを背景に、改善の動きが弱まっている。次回会合の展望レポートで詳しく点検することになるが、先行きは、需要刺激策の効果の減衰などから景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、緩やかな回復経路に復していくとみられる。7月中間評価で示した見通しと比べると、成長率は下振れて推移する可能性が高い。また、米国経済を中心とする不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクには、なお注意が必要である。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の下落幅は縮小傾向を維持しているものの、今後、景気の下振れなど実体経済活動の動きが物価面に影響を与える可能性には、注意が必要である。以上を踏まえると、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期は、後ずれする可能性が強まっている。

3.このような情勢判断を踏まえ、日本銀行は、以下のとおり、金融緩和を一段と強力に推進することが必要と判断した。

第1に、実質ゼロ金利政策を採用していることを明確化することとした。
第2に、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続するとともに、その際の判断基準が「中長期的な物価安定の理解」であることを確認した。
第3に、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくこととした。こうした措置は、中央銀行にとって異例の措置であり、特に、リスク・プレミアムの縮小を促すための金融資産の買入れは、異例性が強い。
この点を明確にしたうえで、市場金利やリスク・プレミアムに幅広く働きかけるために、バランスシート上に基金を創設し、多様な金融資産の買入れ、およびこれと同じ目的を有する固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うことが適当と判断した。このうち、基金による長期国債の買入れは、現行の長期国債買入とは異なる目的のもとで、臨時の措置として行うものである。このため、基金による買入れにより保有する長期国債は、銀行券発行残高を上限に買入れる長期国債と区分のうえ、異なる取り扱いとする。
4.日本銀行は、今後とも、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、中央銀行として、適切に政策対応を行っていく方針である。

以 上

(別添 1)
2010 年10 月5日
日本銀行
当面の金融政策運営について
日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を以下のとおりとし、公表後直ちに実施することを決定した(全員一致(注))。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で
推移するよう促す。
以 上
(注)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、須田委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、
森本委員。
反対:なし。

(別添 2)
「資産買入等の基金」について
1. 買入対象資産等
資産買入れの対象としては、長期国債国庫短期証券、コマーシャル・ぺ−パー(CP)、資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)、社債、指数連動型上場投資信託ETF)、不動産投資信託J−REIT)について検討する。
資産買入れ以外の資金供給の方法としては、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行う。
── 指数連動型上場投資信託不動産投資信託については、日銀法上の認可取得を条件とする。
2. 基金の規模
? 基金の規模は、買入資産(5兆円程度)と、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(30兆円程度)を合わせ、35兆円程度とすることを軸に検討する。
? 買入資産については、買入れの開始から1年後を目途に、長期国債および国庫短期証券は合計3.5兆円程度、CP、ABCPおよび社債は合計1兆円程度、総計の残高が5兆円程度となるよう買入れを進めることを軸に検討する。
3. 買入条件等
? 買入条件・方法は、長めの市場金利低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促す観点から、今後検討する。
? 買入れる長期国債社債は残存期間1〜2年程度を対象とする。

以 上

(参考)
・開催時間――10 月4 日(月)14:00〜16:18
10 月5 日(火) 8:59〜13:33
・出席委員――議長 白川 方明 (総裁)
山口