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流動性の罠と「円安」

10月15日の記事から。
(引用開始)−−−−−−−−−−−−
<特集>日米の金融緩和を読み解く(3)=米国の金融緩和が招く過剰流動性の罠
2010/10/15 19:32
http://www.morningstar.co.jp/portal/RncNewsDetailAction.do?rncNo=368998
円高進行は質への回避か、金融緩和の規模の差か

 さまざまな市場レポートを読むと、円高の進行について、「質への逃避から円が買われた」という表現を目にする。これは、明らかな間違いだ。確かに、経済情勢から見てドル(米国)は決して良いわけではないが、それでは円(日本)がドルに比較して質的に良いかと言えば、五十歩百歩の状況でしかない。円への投資、例えば日本国債への投資は、日本が抱える財政赤字を考えれば、決して質の良い資産とは言えない。質への逃避を行うのであれば、現物資産としての金を買う方がましであろう。

 「円高は金融緩和の規模の格差によるもの」という指摘も多く見かける。この指摘には、一理ある。確かに、大幅なかつ積極的な米国の金融緩和と比べて、日本の金融緩和の規模は小さい。そのため、供給量の少ない「円」の価値が高まり、供給量の多い「ドル」の価値が低下するのは、需給バランスから見てもその通りだろう。しかし、実態経済はどうか。米国経済は、景気対策により一時期は好転の兆しが見えたものの、景気対策の息切れとともに再び悪化し始めている。大規模な金融緩和を実施しても、景気に顕著な回復の兆しは見えてきてはいない。つまり、「金融緩和による景気回復が進んでいない」という点では、日本と同じ状況だ。そして、一部の企業業績が明らかに回復している点でも日米は共通している。

◎金融バブルの再燃

 しかし、大きな違いもある。その端的な例が株価水準だろう。日経平均株価が9000円台半ばの水準で力のない推移を続けているのに対して、NYダウは堅調な動きを見せている。NYダウだけではなく、先進国、新興国を含めた多くの株式市場で相場は上昇基調をたどっている。

 NYダウが「不景気であるにもかかわらず、堅調な動きをたどっている」要因は、米国の金融緩和にある。金融緩和によってあふれ出た低コスト資金が、ヘッジファンドなどの資金となり、「金融相場」を形成しているのだ。まさに、“過剰流動性が生み出した金融バブルの再燃”の様相を呈している。

 「日本のようなデフレ経済への突入を阻止する」「景気減速を何としても阻止する」ためには、大規模な量的緩和も辞さないというFRB米連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ議長の決意が、潤沢な低コスト資金をヘッジファンドなどの投機筋に与え、それが米国をはじめとして多くの新興国の株式市場に流入したことにより、株高が演出されている。こうした投機資金は、株式市場だけではなく、金をはじめとした商品市場、あるいは新興国の不動産市場にまで流入し相場の上昇をもたらしている。
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この記事の要点、円は別に良質の通貨だから対ドルで買われているのではなく、ドル円での金融緩和の程度の比に応じて現在のドル安・円高がある、ということ、10月12日16日にそれぞれ指摘した通りです。
16日に掲げたグラフ(ソロスチャート)を再掲してみます。
2010までのソロスチャート
おおよその期間は、ドル円相場は両者のベースマネー比率でほぼ説明がつきます。
ところが2002から2006年の日銀量的緩和期間には日本でベースマネーが拡大した割には円安とはなりませんでした。
これは拡大したベースマネーが金融部門にのみとどまり、非金融部門には流出せず単に長期国債などに向かっただけで国内の非金融部門には回らない「流動性の罠」が発生していたためと考えられます。

その後の2009年から現在まではと言えば、今度はアメリカで金融危機が起こり、FRBが大幅に金融緩和を行ないました。上の図「ソロスチャート」からの予言?によれば現在の日米ベースマネー比から考えると、ドル円は現在の80円台どころか、50円台になってもおかしくない状況です。 それなのに現在の相場は80円台。
ここから想像されるのは、FRBから潤沢に資金提供を受けた現在の米国金融機関も、日本の市中銀行同様に流動性の罠の中にあり、ドルが米国市中に大して流出しないため80円台程度の「円安」が維持されているのではないか、ということです。 FRBが自ら望むように市中にドルを潤沢に供給し+2%以上のマイルドインフレを維持継続したいのであれば、やはり金融機関へのドル提供よりも政府あるいは家計への直接的なドル提供の方がずっと有効だと思います。
ただ、そういった有効な手を米国が打ったとすれば、ソロスチャートが示す通りに日本は1ドル50円台の超円高になってしまいそうですが…。

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