シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

日本国債破綻の可能性と日銀券ルール

日本国債については、税収よりも多い国債に頼った財政運営が永続可能かどうか、また国民の貯蓄率が低下する中で今後も順調に消化できるのか、などなど、色々な議論がなされています。 もう少し長い目で見れば、日本国債は破綻しないのか、という問題は、国債の破綻と国の破綻がほぼ同義ですから、全ての国民の潜在的な重大関心事ということになります。 今回はこの国債破綻の可能性について考えてみます。
日本国債については、格付機関による格付けがなされています。
例えばスタンダードアンドプアーズは、今年1月、ダブルAの格付けをそれまでの「安定的」から「ネガティブ」に見直しました。
それにもかかわらず、日本国債長期金利は低位で安定しています。
これをもって一種の謎、とする見方もあるようです。
ただ、日本で低位安定しているのは、名目金利です。 
ご承知の通り日本では継続的にデフレです。
実質金利と実質金利との関係は、ざっくり言えば
実質金利=名目金利−インフレ率  …フィッシャー方程式
という関係があります。(厳密に言えば、実質金利はリスクプレミアムの影響を受ける)

高橋洋一氏によれば、「日本の場合、10年間の平均した予想物価上昇率はマイナス1%程度であるので、10年の実質金利は1・9%程度である。米国では、10年の名目金利は2・6%程度だが、実質金利は1%程度である。名目金利は、日本のほうが米国より低いが、実質金利では逆に日本のほうが米国より高い。」とのことです。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100826/plt1008261505002-n2.htm

マクロ的には、期待潜在成長率(今後10年間に期待する実質成長率の平均)が国債実質利回り(国債利回りから期待インフレ率を引いたもの)よりも下がった状態では、企業はビジネスを展開するより国債に資金を振り向けた方がリスクに見合ったリターンが取れると判断する(USB証券会田卓司シニアエコノミストの説)つまり、日本の国債金利が低い(=国債価格が高騰している)のは、安全だから、という訳ではなく、デフレの影響で、他に優る投資先がなくなっているから、ということです。

具体的に言えば

原因その1: 日本固有の要因として、ストックベースでGDP比300%に達する個人資産。
個人向け国債は勿論、民間の預貯金が間接的には国債の大口受け入れ先になっています。 株式にせよ、不動産にせよ、値上がり期待が大きい投資先があれば別ですが、このデフレの中価格が右肩上がりの投資案件は殆どありません。
原因その2:国債市場のホームバイアス。 日本国債の95%は国内保有されている。
海外投資家から見れば、世界市場が4%成長する中で、敢えて実質金利でも2%程度の日本国債に投資する理由はあまりないと思います。 しかし、国内に限って言えば上に書きましたように、安全で実質2%もの利回りが確保できる投資先として、国債は魅力的であるため、国内機関投資家などは国債の安定保有先となっています。
原因その3: 企業部門での資金余剰の存在。
バブル崩壊後、企業は過剰な債務を解消すべく返済を継続。 好況期(03−07年)にも未曾有の収益を更に借金返済に充てた。 その返済資金は銀行を通じ、国債市場に流入しています。 各企業からみて、実質金利を上回る投資案件があるのならば、各企業は当然銀行に債務を返済することなく、その投資案件に資金を向けるでしょうが、実際にはそういった状況にはありません。
現在のこの状況を「カネ余り」と言う人がいますが、実際には「実質金利高」というのが正しい表現かと思います。

で、この状況がいつまで持続可能かといいますと。
原因その1:家計の金融資産は、高齢化に伴い消失しつつあります(家計貯蓄率は90年代末の10%超から、2−3%台に低下。 →現状のトレンドが続けば、'15-20年にかけ、一般政府総債務残高が家計金融資産を上回ると見られます。 ただ、総債務と純債務の違い、家計以外の国債購入者の存在(企業、海外)などから、一般政府総債務残高が家計金融資産を上回るとことが直ちに破綻へと直結するわけではありません。
原因その2:ホームバイアス。 これは今後とも続くのでしょうけれど、国民の国債に対する信頼度によっては国内資金が海外に向かうことがあるかもしれません。
原因その3:企業部門の資金余剰。
 当面は多額に計上される状況にはありません。。
つまり、これまで長期金利を上昇させなかった国内の3要因は次第に薄れていく可能性が高いのです。

では、日本国債が持続可能ではないとしたら、破綻の直前となった、Xデー間近の政府・日銀はどう考えるでしょうか。
突き詰めていえば、借り換えが困難となった、支払期限の来た国債の元利払いをする為に、国家は「徴税権」あるいは「通貨発行権」を行使することになる訳です。
このうち、徴税権は緊急性に欠けますから(預金封鎖とかも考えるでしょうけど)、最終的には国は?通貨発行権を行使するか、?債務の発散を受け入れるかの二者択一となるでしょう。 
タカ派の日銀が、国債の買い入れを拒んでいるうちに長期金利急上昇⇒?、というシナリオも考えられないではないでしょうが、普通には、長期金利急上昇以前に政府からの圧力により、日銀が国債を大量に引き受けてカネをばら撒く(?)というシナリオの方が蓋然性は高いでしょう。 死ななくて済むものをあえて死ぬバカはいませんから。 と考えてくると、日銀の保有する国債残高を発行銀行券の残高以内に抑えるという「日銀券ルール」はいつかは邪魔でしかなくなる日が来るでしょう。

ですが、 9月27日、白川・日銀総裁は、このように語っています。
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" [大阪 27日 ロイター] 白川方明日銀総裁は27日夕、大阪で開かれた地元経済4団体共催懇談会後の会見で、円高の影響について「重大な関心をもって為替相場を注視している」とし、景気の「下振れ(リスク)により注意が必要」と強調した。
 円高の企業マインドを通じての影響などを含めて来週10月4─5日に開かれる政策決定会合で議論する意向を示した。
 今後想定される追加緩和策の一つとして、市場で取りざたされる国債買い入れの増額については「仮にマネタイゼーション(財政ファイナンス)と受け止められれば、長期金利が上がる」とのデメリットを指摘する一方、「買い入れは資金を供給する一つの手段で、現実に日銀は活用しており国債買い入れのメリットを十分生かしている」と説明した。
 長期国債の買い入れに一定限度を設ける銀行券ルールの見直し有無については、明言を避け、「大事なことは中央銀行が現在から将来にわたり適切な通貨の調節ができるか、どういうルールであれ、適切な調節ができるという信頼感を醸成すること」と述べるにとどめた。"
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なんだか日銀総裁には危機感が欠如している気がしますね。
日銀が意味もなく作り出した日銀券ルール。 こんなおかしげな天井がある方が、日本国債と日本をいたずらに破綻に向かわせていると思いますが。

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