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GDP成長率−「日本以外全部回復」はなぜ起こる?

日経ビジネス「新しい経済の教科書」(日経BPムック)上で、エコノミスト飯田泰之氏と荻上チキ氏の対談が載っていました。 曰く、
飯田 「IMFは日本の回復を比較的高めに見積もっていますが、その他の研究機関では、「世界経済は急ピッチで回復!ただし日本以外」みたいな予測を出すところがあります。」

荻上 「まさに「日本沈没」。しかもそこで日本だけ沈んでいく理由みたいなものを説明する物語さえ、流通しているわけです。 日本特殊論とか、国民性とか。」

飯田 「後は「少子化からしょうがない。」といのもありますね。 実は少子化は要因としてはそれほど大きくないんです。例えば韓国だって急ピッチに少子高齢化が進んでいるのに、GDPでは日本を抜くかもしれないんですよ。」

荻上 「そもそも、OECD諸国は軒並み少子化ですね。 アメリカやフランスでは合計特殊出生率が緩やかには回復していますが(中略)」

飯田 「そうそう。「我々(日本)は資本主義のフロントランナーである、他国は回復したかもしれないけれど、それはまだ日本のところまで(資本主義が)来ていないからだ、とか言い出すかもしれません。」 といった具合です。

なお両氏の対談では、これといって日本だけ沈没している理由は述べられていません。
では、日本の経済成長率(名目GDPベース)が日本だけ低い。 その理由は何故なんでしょう。

対談のページに出ていた名目GDPの推移のグラフを下に再現してみました。

名目GDP成長率推移  
           図1 OECD先進国の名目GDP
このグラフ、どっかで見たような…

以前、このブログで、CPI(消費者物価指数)の推移を比較したグラフ(下)を掲載しましたが、名目GDPの推移と、物価の推移は、えらく似ている気がしませんか?
消費者物価指数G7(97年〜)
   図2 OECD先進国の消費者物価指数(CPI)  
ちなみに、実質GDPの推移は、下の図のようになります。
実質GDP成長率推移
    図3 OECD先進国の実質GDP     

これら一連のグラフが意味するところは一体何なのでしょうか?
実質GDPでは、日本も悪いとはいえ、そこそこ健闘しているように見えます。
一方、名目GDPでは全く成長せず。 
デフレの中では、企業売上が減少するため、コストに当たる従業員給与は抑え、リストラを実施し、生産設備も遊休させざるを得ません。
一方、もし日銀が、物価水準を前年比2−3%プラスになる程度に通貨供給量を増やせば、企業売上が増加しますので、従業員の給与水準も上げていくことができますし、リストラも不要で、生産設備を遊ばせることもなくなり、実質GDPをあげることができるでしょう。
それに、2−3%のマイルドインフレが加わり、名目成長率は安定的に4−5%になり、「普通の先進国」になることができます。

つまり、「普通の先進国」と、「唯一沈む国」とを分けているものは、日銀が、必要な貨幣を供給するのか、誤った自説にこだわり、通貨供給量を抑えてデフレをずーっと続けようとするのか。
この日銀の姿勢だけだと思うのです。