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増税派黒田総裁にみていただきたい一枚の図

日銀の黒田総裁は3月23日の参院の財政金融委員会で、消費増税による経済への悪影響について「成長率への影響は減衰し、何年もは出ない」と述べました。
 これは正しい認識といえるのでしょうか?

 ここに黒田総裁にみていただきたい一枚の図があります。 それは消費水準指数です。(図1) この指数は、簡単にいえば、実質的な生活水準をみているといえるでしょう。*1

消費水準指数は消費税を上げるたびに下方に屈曲してきた

図1 消費水準指数の推移
出所:総務省統計局 消費水準指数(世帯人員分布調整済)※-二人以上の世帯(エクセル)
消費税は1989年に3%に、1997年に5%に、そして2014年に8%にそれぞれ引き上げられた。

図1をみると、消費税率が上がるたびに、消費水準指数の推移は下方に屈曲しています。 黒田総裁のいうような「成長率への影響は減衰し、何年もは出ない」状況ではありません。
そこでもう少し詳しく、消費税率0%時代、3%時代、5%時代、そして8%時代での消費水準指数の伸び率を調べてみました。(図2)

消費税率を上げるたびに消費水準指数の伸びが低下した

図2 消費税率と消費水準指数の伸びの関係
消費水準指数(図1)で、消費税率0%時代(1985−1989年)、3%時代(89-93年)、
5%時代(97−01年)、そして8%時代(14−15年)について消費指数の平均伸び率を算出した。
この相関関係が維持されるなら、消費税10%時代には
消費水準は毎年3%減になるだろう。

図2は消費税率と消費水準指数の伸びの相関関係を示しています。
これによれば、消費税の影響は増税単年で消えるようなものではなく、増税するたびに確実に国民の消費生活を蝕んでいることがわかります。 この関係が維持されるのであれば、消費税を10%に上げるならば、消費水準は毎年3%程度で縮小していくことでしょう。

最近、安倍内閣では消費税増税の先送りを模索しているという報道もちらほら出てきています。 SNSなどでもそれを支持する意見が多く見られます。

ただ、過去の消費水準指数の推移から考えると、このままの消費税8%で維持すれば問題がないとはいえず、この四半世紀続く国民生活の水準低下を止めるには消費税を廃止するなどもっと踏み込む必要があるのではないでしょうか。

 黒田総裁は日本国債への信認低下を恐れて、消費税率増税に前向きのようです。 しかし日本国債金利は10年ものでさえマイナスになるような昨今、国債の信認低下、つまり金利上昇がどれほど身に迫った危機だというのでしょう。

 黒田総裁の言い分は「健康のためなら死んでもいい」と思い込む健康オタクに通ずるような倒錯、というのは言い過ぎでしょうか。

*1:消費水準指数は、1世帯当たりの実質消費と似ていますが、消費支出から世帯規模(人員)、1か月の日数及び物価水準の変動の影響を取り除いて計算した指数で、家計消費の面から世帯の生活水準をより的確に把握することができるとされています。