シェイブテイル日記2

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桶屋が儲からないのは風が吹いていないからか

まず最初に、金融政策一本槍リフレ派の方にお詫びしなければいけないことがあります。

前回書いたリフレ派の皆さんは、最近お元気でしょうか。 - シェイブテイル日記 リフレ派の皆さんは、最近お元気でしょうか。 - シェイブテイル日記 で、

インフレターゲット下の金融政策だけでデフレ脱却できる」の対偶は「デフレ脱却できなければインフレターゲット下の金融政策だけではデフレ脱却は無理」、ではないですね。仰るとおりです。

風が吹けば桶屋が儲かる」の対偶は「桶屋が儲からないのは風が吹かないから」です。 
私が言葉足らずだったのは「風は十分吹いたんだからこの命題は偽ですよね」という部分を抜いてしまっていることです。
お詫びして訂正させていただきます。

ご指摘により、私の解釈以外に、「桶屋が儲からないのは風が吹いていないからじゃないの?」という解釈もあることに気づかせていただきました。
金融政策一本槍リフレ派の皆さんどうもありがとうございます。

言われてみれば、現在の状況は「金融政策を十分にやったのに、インフレターゲットレベルに物価が上がっていない」という私の解釈以外にも「物価が上がっていないのは金融政策が不十分だからだ」という真逆の解釈もできますね。

ただ。その真逆の解釈をされている方に幾つか質問です。

(1)元々の手段は達成したのでは?
 インフレターゲット下にマネタリーベースを2倍にすれば、物価は2%に上がる、という黒田総裁の話に皆さんも納得して諸手を挙げて賛成していたのでは? 
 もちろん、雨が降るまで雨乞いの踊りは止めないから雨乞いの踊りをすれば必ず雨が降るという考え方もあるでしょうけれど。

(2)インフレを脱却した場合には?
バブルの最中でもマネタリーベースは30兆だったのが現在300兆円です。 
「バブル結構じゃない?望むところです。」というご意見には私は半分賛成で半分反対です。
バブルが半永久的に続くものなら私も大賛成ですが、言葉の定義通り、バブルは必ず弾けます。

グリーンスパンバーナンキもバブルの制御について「日本での無様な失態とは異なり、FRBはきちんと金融政策でバブルはコントロールする」と自信を持っていたようです。バーナンキは恐慌の専門家でもありましたし。

しかし、実際のバブルはグリーンスパンがバブルの最中にフロス(小さな泡)と言っていたように、いつがバブルかは誰にも判りません。

そしてバブル崩壊の兆候が現れるや、投資家は我先にと逃げ出すので、金利を下げても追いつかず、火消し役のバーナンキFRBは”behind the curve"(後手後手)と批判されました。

日本の80年台バブルの時はマネタリーベースは30兆円で、室内に30キロガソリンタンク置いたらどかっと燃え上がった状態に似ています。

デフレ下ににマネタリーベースを300兆円積み上げる政策は、氷点下20度で室内にガソリンタンクを300キロ入れた状態に似ているように思います。 

リフレ派そして私らの望むように気温が普通の25度に戻った時、室内に置かれたその300リットルのガソリンに、何かの拍子で火が突いた時の対策もお考え何でしょうか?

もしそこまでは考えていないし、そうなってから考えれば良い、という考えには賛同しかねます。

なぜなら、インフレターゲット下のマネタリーベース積み上げの効果は、単純な貨幣数量説に則るというよりも、円安と資産高を介するルートだと言われているのですから、資産の異常高騰(バブル)は当然予測されて、その対策もなければなりません。

(3)それ以前の話、買える国債も減ってきている
現在のアベノミクスは大規模な金融緩和と緊縮財政です。「経済を良くするってどうすれば」氏によれば、今年度は昨年度比8兆円の緊縮財政だとか。*1
そうなると、金融だけで対策するならば、一層の国債購入が必要でしょうね。
ところが国債は金融機関が通常業務をおこなう時に、良質の担保として機能するので、銀行がすべての日本国債を手放すことは出来ないでしょう。

そういう意味では日本の国債問題は多すぎるから少なすぎるに変貌しつつあるのではないでしょうか。
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これらいくつもの課題のある手段に比べれば、消費税0%は本当に温和な政策だと思います。

しかも、それにより名目GDPは確実に伸び、税収に至っては更にその4倍ほど伸び、政府債務健全性は向上するのです。

政府支出が増大すれば政府債務健全性は改善するという話は、実は私だけの珍説というわけではなく、公共投資について、政府債務健全性指標が改善するという結果は宍戸駿太郎氏の主張の他、IMFの研究者のモデルでも出されています。 (IMF World Economic Outlook 2014 chapter3 "IS IT TIME FOR AN INFRASTRUCTURE PUSH? THE MACROECONOMIC EFFECTS OF PUBLIC INVESTMENT" p82)

他にも何人か、同様の指摘をされていますので、政府支出が増えれば、財政問題は悪化するというのは、財政健全性至上主義者の似非理論にまんまと嵌められているだけだと思います。

筆者は、財政健全性至上主義擁護の似非理論こそ、名目GDPの長期停滞を引き起こし持続的なデフレを論理的にサポートする、政府債務健全性指標悪化の主犯だと確信しています。
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昭和恐慌時デフレにしても、19世紀英米の大不況デフレにしても、改善策が出てくれば、半年-1年で酷い/長期のデフレも簡単に脱却出来ています。 効果的なデフレ脱却策は短期間でキチンと効くのです。 
(イラスト:ニシハラダイタロウ氏)

*1:経済を良くするってどうすれば アベノミクス・4月も再失速を観測