シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

中世ヨーロッパに、増税したら国民が裕福になった事例があった

世ヨーロッパで数世紀に渡り発行されていたある種の貨幣では、領主への取り分としての税を増やすことを意図しながら、結果的には領民たちも大変裕福になったようです。

 

貨幣というのはいかにも人工的な存在です。

 

万物は必ず滅びるのに、現代の貨幣には負の利率がなく、永遠に利子を産み増え続けます。

貨幣にこの性質があるために、減るのが当たり前の資源をすり減らして、利子を伴い増え続ける負債を支払う、というの矛盾が発生してしまいます。

 

この貨幣の矛盾について批判的だったイギリスの経済学者、リチャード・ダウスウエイト(Richard Douthwaite)の著書に「貨幣の生態学」という本があります。

 

この著書の中で、神聖ローマ帝国自治領で発行されていたブラクティエート(bracteate)という貨幣について紹介されていました。*1

 


神聖ローマ帝国自治領でブラクティエート(bracteate)という有効期間たった1年の薄い銀合金硬貨が12世紀から15世紀にかけて発行された。
1年後には硬貨は失効し、新硬貨と2から2割5分引きで交換せねばならなかった。

14世紀、ザクセン地方ヨハン2世は36年間に86回も硬貨を変えた。ブラクティエートは1晩で価値の4分の1を失うため人々はできるだけ早くそれを使った。
日常の買い物が済むと残りは住居や資産の改善に使われた。この時期には普通の人々でさえ快適な住居を持つことができ、商人組合は教会に塔や窓あるいは礼拝堂一式を寄付するほど裕福であった。
 
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    図 ブラクティエート(bracteate)の例
          デンマーク  Funen島で発掘されたもの。
 
シェイブテイルとしましては、この逸話は、2500年前の次のようなイソップ物語の裏返しのように感じられます。
 

全財産を金塊に換え、人里離れた所に埋めた男がいた。

しかし、盗まれていないだろうか、と不安でならない。

結局、彼は、こっそり通って掘り返し、無事を確認するのが日課になっていた。

その行動に不審を抱いた近所の悪党が、男の後をつけて、秘密を知ってしまったのである。

次の日、いつものようにやってきた男は、卒倒せんばかりに驚いた。

隠し場所が暴かれ、すべての金塊が盗まれているではないか。

彼は、髪の毛をかきむしり、「もう、生きる希望もない」と、いつまでも悲嘆に暮れている。

ある人が、言った。

「そんなに悲しむのはよしなさい。あなたは、実際は、お金を持っていなかったのと同じなのですから……。お金は、使うためにあるのです。お金があった時も、使わずにしまっておいたじゃないですか。

使わない金塊なら石と同じです。同じ場所に石を埋めて、金だと思ってはどうですか」

 
 
お金って、文字通り 使ってなんぼ、使われてなんぼ、なんですね。
 

 

貨幣の生態学―単一通貨制度の幻想を超えて

貨幣の生態学―単一通貨制度の幻想を超えて

  • 作者: リチャードダウスウェイト,Richard Douthwaite,馬頭忠治,塚田幸三
  • 出版社/メーカー: 北斗出版
  • 発売日: 2001/08
  • メディア: 単行本
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