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日銀が株価高騰政策を続けなければならない理由

 昨日の日銀政策決定会合では「量的・質的緩和」の導入が決定され、マネタリーベースを年間60〜70兆円に相当するペースで増やすほか、不動産投資信託J−REIT)や上場投資信託ETF)などリスク資産の購入額拡大を柱とする追加金融緩和策の実施も決まりました。

 これを受け、昨日の株式市場では日経平均後場に急騰、前日比272円高で引けました。 昨日の流れを受けた今日の前場でも一時は500円超の急騰となっています。
 昨年の野田前首相の衆議院解散宣言の頃の株価が9000前後で、4ヶ月半後の現在の株価はその4割増し以上ですから、既に現在の株高に高所恐怖症気味になる方も少なくないかもしれませんが、筆者としては見通せる将来までは、この株高は継続すると考えています。

 その理由は日銀の新副総裁となった岩田規久男氏ら(編者は内閣府官房参与の浜田宏一氏)の著作、「リフレが日本経済を復活させる」に書かれています。
リフレ政策論者の岩田規久男氏は、リフレ政策が実体経済に波及しインフレ率を上げるメカニズムについて次のようなスキームを紹介しています。*1

  • インフレ目標設定を設定し、市場の期待に働きかける
  • マネタリーベース増大⇒予想インフレ率上昇→株価上昇(イマココ)
  • →トービンのq上昇(=予想実質資本コスト低下と同値)→投資増大

今後期待される「トービンのq」の上昇については、ウィキペディアに簡潔な記載があります。

【トービンのq】
 アメリカの経済学者ジェームズ・トービンが提唱した投資理論であり、トービンのqは株式市場で評価された企業の価値を資本の再取得価格で割った値として定義される。

企業の価値とは、株式市場が評価する企業の株価総額と、債務の総額との和である。これは、いまこの企業が解散して所有者がすべて入れ替わると仮定したとき、そのときの株主と債権者が受け取ることのできる金額を表している。他方、資本の再取得価格とは、現存する資本をすべて買い換えるために必要となる費用の総額のことである。

qが1より小さい場合、市場が評価している企業の価値は現存の資本ストックの価値よりも小さい。すなわち、現在の資本ストックの価値は過大であり、企業は資本ストックを使って財を再生産するよりも、資本ストックを市場で売却したほうが利益が上がることを意味している。市場はこの企業の価値が既存設備の価値よりも低いと評価しているため、企業は投資を控えるべきであり、場合によっては既存設備の縮小(マイナスの投資)を求められる。

一方、qが1より大きい場合、市場が評価している企業の価値は現存の資本ストックの価値よりも大きい。すなわち、企業は資本ストックを使って財を再生産するほうが大きな価値を生み出すので、資本ストックを増やして財を増産したほうが有利となることを意味している。市場はこの企業の価値が既存設備の価値よりも高いと評価しているため、企業の将来の収益力は現在の企業規模から算出される収益力よりも大きくなることが期待され、場合によっては投資の拡大を求められる。

つまり、トービンのqが上昇すると投資が増加し、トービンのqが下落すると投資が減少すると考えればよい。

岩田規久男・日銀副総裁は、目指す2%の物価上昇につながる投資需要増大には、株価上昇がまず前提条件となる、と考えているわけですね。

 となれば、日銀は原理的には無限にマネーを創出できますから、少なくとも物価上昇率CPI=2%が誰の目にも達成可能になるまでは、金融緩和とその結果としての株価上昇は日銀が保証したようなものと言えそうです。

 さらに言えば、物価上昇率がCPI=2%に達したのちも、日銀はこのマイルドインフレを維持していくでしょうから、その後は短期的な株価変動は避けられないにしても、中長期的には、物価上昇率よりも高い株価上昇率が維持されるでしょう。

 近い将来、南海トラフ地震や富士山噴火、あるいは北朝鮮による軍事挑発などがあったとしても、それらが永続的に悪影響をおよぼすものではないでしょうから、黒田日銀のもとでは、絶好の買い場の提供となる可能性さえあるように思います。

まさに「国策に売りなし」ですね。*2

*1:同書p240

*2:とはいえ、投資は自己責任でお願いします。