シェイブテイル日記2

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これまでの国家予算の使われ方を調べてみた

衆議院選挙が公示され、16日の投票日に向け動き出しました。 この衆議院選挙今後の政権の枠組みを決める選挙となります。 選挙結果によっては国家予算の使われ方も大きく変わってくるでしょう。 そこで、現在の国家予算(ただし一般会計)の歳出内訳の経時変化を調べてみました。*1 なお、歳出総額は財務省発表の実績ベースですが、内訳データはデータが得やすいことから当初予算ベースとなっています。


図1,2 社会保障費と国債
左軸:内訳費用、右軸:歳出総額(いずれも兆円)。以下の図も同じ。 
社会保障費・国債費のふたつは国家予算での伸びが著しい費目で、国家予算の圧迫要因と指摘されている。 

 図1,2は社会保障費と国債費です。 2012年度予算では社会保障費が29%、国債費が24%と両者で約半分を占めますので、次の政権はこれをどうコントロールするかの手腕が問われます。

次に比率が大きい費目は地方交付税です。 その次が公共事業です(図3,4)。

図3,4 地方交付税と公共事業費
地方交付税は政権により増減が目立つ。近年では小渕森政権(1999〜2001年)で急増。
安倍福田麻生政権(2006〜2010年)で漸増。
これに対し小泉政権(2001〜2006年)と民主党政権(2010〜2012年)で減少。
公共投資は、2001年をピークに単調減少し、2012年予算はピーク比半減となった。

地方交付税の増減は一方的な方向性はありませんが、時の政権の指向が現れているようです。
橋本・日銀デフレ(1997年〜現在)に突入後、小渕・森政権は公共事業で景気回復を図りました。しかし、当時の日銀は、中原委員が孤軍奮闘して金融緩和を主張するも、速水総裁以下残りの全員は金融タカ派で、不況がいっそう深刻化した2001年まで金融緩和をしようとしませんでした。*2
この財政拡大・金融緊縮政策を続けている間、為替は1998年8月のドル円144円から1999年末には102円まで、約30%もの円高が生じ、結局景気の回復はありませんでした。 そこで2002年の小泉政権以降は、公共投資国債残高を増やすだけで意味がないという判断から、公共投資増額が省みられることなく今日に至っています。

 ただ、この10年以上に及ぶ公共投資軽視の中、先日のようなトンネル崩落事故が起きています。崩落したコンクリート板は一度も改修されていなかったとか。  その他にも最近では大口径の水道管破裂事故が連続で起きたりするなど、インフラ新設には熱心だが、インフラの維持・更新を軽視してきた各政権のツケは国民に回りつつあるのではないでしょうか。
 また、デフレ脱却に最も効果がありそうな金融緩和策下の財政政策を、現在の橋本・日銀デフレで実施した政権はありませんでした。 自民党の安倍総裁が大胆な金融緩和と大幅な財政政策増額を公約していることに対しては、シェイブテイル個人的には相当期待しています。

 さて、図5,6は文教科学費と防衛費です。 文教科学費('12年度5.4兆円)は小泉政権で大幅削減されてその後も復活せず推移しています。防衛費(同4.7兆円)は近年漸減で推移しています。この防衛費漸減と、北方領土尖閣竹島での対立国の積極的な動きは無関係ではないでしょう。


図5,6 文教科学費と防衛費
文教科学費の大幅削減は「小泉・竹中改革」の結果。防衛費は2001年以降はほぼ漸減が続いている。

 残る費目では政府開発援助(ODA)、恩給を見ておきましょう(図7,8)。 

図7,8 政府開発援助費と恩給
ODAは最大1兆円程度拠出されていたが、現在では5000億円強までほぼ半減した。
恩給は漸減が続いているが、現在でも5700億円と、ODAの支出を上回っている。

日本の財政が逼迫し始め、ODAへの拠出は次第に縮小して行きました。 ODAの縮小は、日本の国際的発言力を減じる結果になっているかも知れません。
ただ、その間中国だけでも総計6兆円が投じられているといいますから、現在の尖閣を巡る中国当局の反応は恩を仇で返す態度といえましょう。 
恩給に現在もODAを上回る金額が支出されていることは私も知りませんでした。 こうした恩給や年金の類は一旦支払い始めたら既得権化しますから、現在施策として取り沙汰される最低年金保証制度やベーシックインカムなどは、よほど先までの制度設計なしに踏み切るのは危険と言えるのではないでしょうか。

以上、近年の日本の一般会計での支出を概観してきました。 この他に、特別会計という巨大な支出の仕組みもありますが、次の政権を担う人々がどのような考え方でこれらの国家予算を立案するかは我々の生活にも直結するわけですから、歳出総額だけでなく、費目にも注目した政策論がもっとあっても良いように思います。

*1:出所 財務省HP、「歴代首相の経済政策全データ」(草野厚)を編集

*2:詳しくは日銀の政策決定の本質 日銀の政策決定の本質 このエントリーをはてなブックマークに追加に記載