消費税・世論調査と税収の推移
2012年5月8日から消費増税関連法案の国会審議が始まりました。これにちなみ、2年前の参議院選で当時の菅直人首相がマニフェストにはない消費税増税を掲げて以降の消費税に対する世論調査の結果を図1にまとめてみました。
図1 消費税増税に対する世論調査結果の推移
2010年6月、2011年3月、2012年1月が読売調査、2010年7月が時事、
2011年7月がJNN、2011年11月が日経、2012年3月が産経調査。
読売新聞の世論調査では、消費税増税に寛容な意見の比率が高いことが知られていますが、その読売でも最近は消費税反対が賛成を上回るようになって来ました。 消費税を増やせば将来の年金が安定する、という説をマスコミが流し、それを見た視聴者が消費税増税を渋々受容する、という形が崩れてきています。
読売新聞など財務省の手が入ったマスコミ*1 が盛んに増税キャンペーンを流しても、ネット情報などで増税で年金の安定というロジックに疑問を持つ有権者が増えてきているのでしょうか。
図2は財務省ウェブサイトに載っている税収推移のグラフですが、消費税率を上げると、当然消費税収は増えています。ただし、法人税と所得税は、消費税という民間から政府への所得移転により景気が冷え込むため共に減少しています。
図2 主要税(消費税・法人税・所得税)税収推移(財務省ウェブサイトより)
平成9年にデフレ下で消費税を上げたところ、消費税収は増えたが、他の二税からの税収は減った。
図3は図2を集計したグラフです。消費税率を上げると消費税は増えましたが、他の二税が減り、トータルでは税収が減っていることが分かります。 特に所得税収がほぼ単調減少しているのは、消費税増税によりデフレが加速し、個人の所得が年々減少していることに対応しています。
図3 主要税収推移の集計(図2より作成)
平成9年にデフレ下での消費税増税をしたのち、消費税収は増えたが、所得税と法人税は共に減っている。税収増は増税の単年のみであり、2年目には消費税増より他の税の減収が多く、増税前水準以下に。
法人税は景気が回復すれば一時的に持ち直しているが、所得税はデフレで個人所得が年々減っているため、ほぼ単調減少傾向が続いている。
菅直人前首相は元来は脱官僚派でしたが、財務省事務次官の勝栄二郎氏については、「痒いところに手が届くように配慮してくれるし、難解なことを分かりやすく説明してもらえる」と心酔し、2010年の参議院選でマニフェストにない消費税増税を打ち出したとのことです。*2
勝栄二郎氏は、「デフレで消費税を増税すると、年金原資の税収は減りますよ。」という肝心なことは財務省ウェブサイトには載せたのに、菅直人氏にも野田首相にも伝えなかったんでしょうか。*3
(つづきの記事)
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