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日本国債は危ないか、日本国債を危うくするものは誰か(2)

【要約】
財務省のHPで日本の財政を考えるというサイトでは現状を放置することの危険が説かれています。
・ただ、同じ財務省でも海外格付け会社向けの意見書では少々トーンが異なるようです。

 2回前のエントリー「日本国債は危ないか、日本国債を危うくするものは誰か」で国債を殆ど自国通貨建てで持ち、デフレ状態の日本では、日本国債のデフォルトは考えにくいし処方箋もあることをお伝えしました。*1

今回は切り口を変え、財務省では日本国債のデフォルトについてどう捉えているかを見てみましょう。
財務省HP内に「日本の財政を考える」というサイトがあります。*2
この中の「テーマから調べる」というサイト内の、「5.現状を放っておくと何が困るの?」には

〜借金の累増は活力ある経済・社会の大きな足かせとなります〜
 国の財政は、普通国債残高が600兆円を超えると見込まれるなど、極めて厳しい状況にあります。
 国の債務の累増に伴い、国債費が増加し、教育、公共事業、防衛といった政策を実施するために使うことができる経費が圧迫されています。
 近年長期金利の水準は低い水準で推移していますが、今後、仮に財政の持続可能性に対する懸念が高まり、金利の水準が急激に上昇すれば、利払費が大幅に増加することとなり、歳出面での大きな圧迫要因となります。 また、金利の急激な上昇は、民間の設備投資を抑制するとともに、多額の国債保有する金融機関のバランスシートを傷めるなど、国の経済全体に大きなマイナスの影響を与えることにもなりかねません。

と記載されています。
 これは大変ですね。 国の財政を預かる財務省が国民に対して財政の持続可能性に懸念を示しているのですから。

ところで同じ財務省HP内を「デフォルト」で検索してみます。*3
その検索結果の中に「外国格付け会社宛意見書要旨 : 財務省」というものがありました。

外国格付け会社宛意見書要旨 [ 英文 ]
1. 貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
 従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。
(1) 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。
 例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
・ マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・ その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・ 日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高

(3) 各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。
・ 一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。
・ 1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。
・ 日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。
2. 以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている。

いや、こちらは頼もしい。財政の専門家として「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」と言い切ってくれちゃってます。

ただ、国民や不勉強な政治家向けに平易に説明するときには、「今後、仮に財政の持続可能性に対する懸念が高まり、金利の水準が急激に上昇すれば、利払費が大幅に増加することとなり」と仮に、万が一の場合で脅かしておられるのに対して、英語や、デフォルトなど難しい表現が分かる相手(海外市場向け?)には「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と正論を言い切っているのはどんなもんなんでしょう? 
 
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