シェイブテイル日記2

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デフレ日本の労働者が置かれた状況

【要約】
OECDデータベースで、労働単価推移を国際比較してみました。
・それによれば、日本の労働単価は、非正規雇用比率の増大と、正規雇用者との賃金格差放置により、他のOECD諸国とは全く異なった動きを辿っていることが分かります。

前回のエントリーで、筆者が「『物価が上がっても、自分の給料だけは騰がる気がしない。』とお思いのあなた。 そんなことはあり得ません。」と書いた*1のに対し、「韓国では物価が騰がっているが、実質賃金が下がっている。」との指摘をいただきました。
また「収入が増えないせいで結婚出来ない人が増えて少子化する、とかいうような問題」は全世界共通なのではないか、という疑問もいただいております。
 
 そこでOECDのデータベース*2を用いて、日本・韓国その他先進国の、自国通貨ベースでの単位労働コスト推移を見てみました。  下がそのグラフです。

OECD諸国の労働単価推移(自国通貨ベース)

韓国では若年労働者の実質賃金が若干低下しているとされていますが、自国通貨・名目ベースでは順調に賃金が増えています。 それぞれの労働者の立場になればすぐ分かることですが、実質ベースではなく名目賃金が順調に上がっていくことがなにより大事でしょう。

日銀首脳はコストに見合った仕事をしているのか

 日本は世界経済史に残る長期デフレが続いています。 その上日本では非正規雇用比率が次第に高まっていて(下図)、しかも日本はOECD諸国中、フルタイム労働者の労働単価とパートタイム労働者の労働単価の比が最大となっています。(更にその下の図)

日本の非正規雇用比率推移*1


OECD日本の労働市場調査 日本のパートタイム労働者の賃金水準(フルタイム労働者比)はOECD諸国中最小。つまりフルタイム労働者の労働単価とパートタイム労働者の労働単価にはOECD諸国中最大の格差がある。 出所OECD*2


現代日本でのデフレの進行は消費者物価指数にはされにくいのですが、小泉改革」で非正規雇用促進策が採られたこともあって、日本の労働者の賃金の減少実際のデフレ進行の程度(GDPデフレータの減少)に比べ、一段と加速しています。*3

こうした状況に対し、日銀総裁や日銀政策審議委員の給与は高止まりしています。 これらの要職の方々がしっかり仕事をしているとすれば、3000万や4000万程度の給与が別段高いとも思いませんが、自身の高給に目が曇って世の中が見えていないとしたら、例えば日銀総裁給与を世間の給与所得の3倍とするなどで、惰眠*4 から目を覚ましてもらう必要があるかもしれません。
 国債の直接引き受けなり、新発国債発行+買いオペなりで金融政策を介した景気浮揚策を行えるのは、政府紙幣などを除けば基本的には中央銀行だけですから。


日米の労働者年収と中央銀行総裁らの年収水準 
かつて5000万円を超えていた日銀総裁の年収は、H22年に前年度比で1%ほど引き下げられ、3440万円、日銀審議委員は2606万円となった。 FRBバーナンキ議長の年収は19.1万ドル(約1500万円)日米の労働コストは自国通貨建てで指数化されているため、直接両者(赤と青)を比較することはできない。

【関連記事】
日本の物価は安定しているのかそれとも世界最低か 日銀の目指す消費者物価指数0%とは世界的に見てどのような状態なのでしょう。
日本の「物価安定」は先進的、(あるいはせめて普通)なのか 日銀総裁は日銀法に基づく自らの政策の先進性を訴えていますが…。

*1:http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110723/1311411771

*2:http://www.oecd.org/dataoecd/14/18/45603954.pdf

*3:デフレになったら消費者物価指数はあまり下がらないのに、単位労働コストはひどく下がる  http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110703/1309704830

*4:この記事コメント欄の白川総裁発言をご覧ください→ http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110702/1309578197