シェイブテイル日記2

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世界一優秀な中央銀行はどこか


昨日のエントリーで、世界の国々の中での日本のデフレを考えてみました。 人によってはデフレは世界中の国々が経験すること、ともとれる論調の記事を書く方もいますが、まずその継続年数が普通ではないことは確かです。
さて次に、世界的にもある程度は存在しているデフレ経験国の中で日本のデフレの位置づけを見てみましょう。
データベースとしては”IMF World Economic Outlook Database,October2010" を使います。
昨日のエントリーで書いたように、96年以降デフレを経験した国々は24カ国ありました。これらの国々の物価水準推移を、GDPデフレータで見てみました('94=100)
 これで分かりますように、アジアのデフレ経験国(日本・台湾・シンガポール)を除けば、大半のデフレ経験国では'10年の物価水準は基準年よりも50−450%も上昇しており、要は物価がコントロールされない国々では時々デフレが起こる、ということです。 一方、世界には20以上のデフレ経験国があると言いましても、基準年('94年)よりも物価が下がっているのは日本以外にはありません。
こちら右の図は上の図からアジアのデフレ経験国3カ国だけを抜き出したものです。日本同様、台湾・シンガポールは、ある程度持続的に物価下落を経験しています。ただ、両国のデフレ継続期間は4,5年ですし、そもそも台湾などはGDPに占める中国の比重が6割などという話もあり、「中国が近いから物価が下がる」などという説は、この図に韓国を書き加えてた図を見れば、物価の一部を説明は出来ても物価全体はまた別の話、ということが分かります。
近隣に自国よりも物価水準が低い国がある、というのは特に東アジアに限ったことでもなく、西欧から見れば、近隣には物価が著しく低い東欧諸国がありますが、現在の西欧にデフレで苦しんでいる国はありません。
 さて、デフレ経験国を見ても、東アジア近隣国を見てもその物価から日本のデフレへの教訓は特に得られませんでした。 そこで、今度は視点を変え、同じ期間に世界で最も物価変動が小さかった、いわゆる「物価の優等生」諸国を見てみましょう。

は日本、 がいわゆる物価目標導入国、 はそれ以外の国です。それぞれのマークの上下に、過去13年間の物価変動のバラつき(標準偏差)を示しました。左から、標準偏差が小さい(物価が変動しない)順に13カ国並べてみました。
このグラフから分かる通り、日本の異常さは、物価変動は世界一狭い範囲にコントロールされているにも関わらず、その水準が他の物価安定国と比べて著しく低いことです。
 それは日本と他の12カ国を対比させると日本の異常さが際立ちます。下の図は、日本・それ以外の物価安定国・台湾・韓国の物価水準(13年平均)とそのバラつき(標準偏差)を示したものです。日本は、最初に見たような、デフレになったり酷いインフレになったりするような、物価がコントロールされてない国ではありません。それどころか、物価水準は日銀が誇るだけあって、(標準偏差で見れば)世界一コントロールされています。  ただその水準は他の物価安定国や韓国などが狙う+1-3%よりも著しく低い−1%を狙っている わけです。 日銀はあるべき物価水準として'06年にはプラスマイナスゼロ、その後+1%を中心とするプラス領域と低いながらもプラスの物価領域を狙っていることになっています。
ところが、プラス乖離がある物価指標、消費者物価指数(CPI)を使っていることから、実際にはずっと安定的にマイナス物価を狙ってまた達成していたという訳です。 韓国などは、日本よりも物価水準にバラつきが大きいですが、正しい物価水準GDPデフレータ2%を狙い、達成しています。隣国の日本からみて、プラスの物価水準目標を狙う、まともな中央銀行を持っている韓国は、他の条件が殆ど同じ(中国に近く、輸出立国で、少子高齢化社会)であるだけに羨ましい限りです

 以前、日銀・白川総裁が自民党山本幸三氏から国会で質問された際に、「物価指標として(上方バイアスがある)消費者物価指数を使っていることをどう考えているのか?」と質された時に、白川総裁は「(GDPデフレータよりも)消費者物価指数は国民に分かりやすい指標ですから。」と答えていました。
 例え国民に分かりやすくても間違った指標を使って、間違った物価水準を狙い続けては話になりません。 物価水準を正しく示す、GDPデフレータを用いて物価とこれをコントロールするマネーの水準を決めるべきでしょう。

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