シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

地域通貨の専門家も支援した「杉並区モデル」はなぜうまく回らなかったのか

年前の杉並区では、地域通貨の専門家、北海道大学西部忠(にしべまこと)氏らをアドバイザーに、電子地域通貨「杉並区モデル」を検討していました。

 
これは杉並区自身が実施主体となり、推進委員会には、杉並商店会連合会、東京商工会議所杉並支部、杉並産業協会、西武信用金庫、イオン、ぐるなび、セブン・カードサービス、JR東日本ビットワレットヤマト運輸、杉並区長に加え、アドバイザーには慶応院政策・メディア研究科の金子郁容教授、前述の北大院・経済研究科西部忠氏といったそうそうたるメンバーで検討されていたようです。
 
さて、地域通貨の実施主体は、80年前のヴェルグルでは町長が出資して町として実施しています。 
 近年の日本では主にNPOなどが地域通貨の実施主体となっていて、なぜか杉並区のように自治体が自らの信用をバックに実施したという事例が少ないようです。
 
これには「歳入歳出外現金」の扱いに関する法律が関連していると思われます。
歳入歳出外現金(公金外現金のこと)は、無制限に保管できるものではなく、その権能が法律又は政令に根拠を有し、保管手続等が法律又は政令に根拠を有している場合に保管できる (地方自治法235条4項)
杉並区では区自身が地域通貨実施主体になることを想定し、この公金外現金の扱いについては総務省への照会がなされています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kentou/110118/soumu_k.pdf

 照会・回答のコードは 040060。

 

◯杉並区照会事項

求める措置の具体的内容
地域通貨を流通させるにあたり預かり金処理を行うため、地方自治法により法律又は政令の規定によるのでなければ保管することができないとされている現金又は有価証券(入札保証金、職員の給与に係る源泉所得税等)として地域通貨と換金された現金を認めていただきたい。


具体的事業の実施内容・提案理由
区が発行主体となって地域通貨を発行。区内の通貨流通量を増やすことで区内経済の活性化を図り、区内商店街を支援する。
また非接触ICカードを使用し、地域通貨や既存の電子マネーのほか行政サービスなどを搭載することで行財政改革をも実現していく。

総務省回答

地方公共団体が無制限にその所有に属しない現金を保管することは責任の所在を不明確にすることから、当該団体の所有に属しない現金については、債権の担保として徴するもの、あるいは、法律又は政令の規定に基づき保管する現金以外のものについては、認められない。
・また、地方公共団体が任意に保管可能な現金の範囲を定めることは、その現金の亡失等にかかる職員の賠償責任等、現行規定に基づく公金の取扱に関する種々の制度との均衡を失することから認められない。

 杉並区が上記の照会を行ったのは総務省回答経済特区19期となっているので、平成23年(2011年)頃のことだったのではないでしょうか。 その後、昨年3月に断念するまでに、大学教授ら経済専門家を交えて1,2年は検討を継続しているとすれば、杉並区では自治体法第235条4項自身は何らかの方法でクリアしている可能性もあります。 
 
最終的には断念に至っていますが、その断念理由は、電子通貨に限定したため初期インフラ導入コストが高く、事業者の支持を得られなかったということだったと報道されています。
日刊工業新聞 掲載日 2013年04月01日(後半は有料となっています。)
 減価スクリップを実施するにあたり、電子地域通貨「杉並区モデル」から得られる教訓は
 
 
 
1.先が見えにくい減価スクリップを実施するにあたっては、あまり最初から大きな構想を描かず、1段もしくは2段の通貨モデルでの実証検討が必要。
2.減価スクリップを地方自治体主体で実施する場合には、「歳入歳出外現金」の扱いに注意が必要。
といったところでしょうか。
大きな成功事例ヴェルグルでは減価マネーが回りすぎるので、当初よりマネーを減らして運用したとか。
減価することの意義を信じて、印刷したスクリップとして小さく産んで大きく育てるのが良さそうです。

減価スクリップとは?(小冊子の本文v1.1)

 

 

昨日、地方自治体・商店街などに向けた啓蒙小冊子のv1.0を作ったことをお知らせしました。 にわか作りで出来があまり良くなかったので、改定版v1.1を作成しました。

電子ブックは無償版ですので、掲載期間が短いので、今回は小冊子の本文も掲載します。

強力な地域経済活性化策 減価スクリップとは

                  H26.03.14 シェイブテイル

 

■日本は世界でもまれなデフレ国(Fig1)

 

•G20諸国で物価がマイナス(=デフレ)国は日本だけ(物価上昇率最下位)
•世界全体でもまれなレベル(物価上昇率184/187位)
•日本のデフレは5%消費税増税(’97)の翌年以来続いている。

⇒日本は物価がマイナス

だからモノ・サービスが売れない

 

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Fig1 G20諸国の物価上昇率

 

■98年春以降になぜか多数の自殺者(Fig2)

・98年春に自殺者が突然急増:対前年同月比6割増

・この増え方は東日本大震災後を上回るもの

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Fig2 自殺者数対前年同月比と失業者対前年同月比

1998年春に、2011年春(東日本大震災後)を上回る自殺者数増加を記録。

 

■98年春の自殺者増加の殆どが男性(Fig3)

・男性の自殺者は経済状況と密接に関連(年次統計.com)

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Fig3  性別自殺者数推移(年次統計.com

 

■おカネを速く回す方法があれば!

・15年以上のデフレ、新たな消費税増税

⇒消費者の財布の紐が一層固くなりかねない

・「天下の回りもの」のおカネが回っていない

⇒ならば、国だけに頼らず、自分たちだけでできる「おカネを速く回す方法」があればよい!

 

■減価スクリップで地域だけの好景気!

・減価スクリップという景気対策が地域だけで可能

・減価スクリップの景気への好影響は、海外では多数の自治体で実証済

・減価スクリップは実施当事者には元手がかからない

 

■減価スクリップとは?

・1000ポイントが1000円として使える商品券のようなもの

地域通貨と同様に繰り返して使える

-1000ポイントの減価スクリップを地方自治体が880円で販売

-消費者と、あらかじめ募った減価スクリップ使用可能な店・企業間で、1000ポイントを1000円とし、円と併用して使用する

-有効期間は最大1年

 

■減価スクリップのスキーム-差額は誰が負担?

・自治体が、1000円分として通用する減価スクリップ1000ポイント券を880円で消費者などに販売する

・協賛企業は1000ポイントで1000円分の商品販売を認める

・流通する減価スクリップは月初には10円分の印紙貼付が必要

-事業者は多く売れ、消費者は安く買える

・システム運用終了時には、1000ポイント券を実勢価格近くで買い戻す(1年後には1000ポイント減価スクリップに120円分印紙つき)

 

・減価スクリップはある月の最初には額面の1%の印紙を貼らなければならない

・少しでも負担を嫌がる消費者・企業はババ抜きのように減価スクリップをどんどん使う

・1年経てば、1000P減価スクリップに対して自治体に支払われたおカネは880円+120円=1000円に(減価スクリップの払い戻し原資)

⇒地域の自治体・消費者・事業者など、参加者がだれも損をせず、全員得をするシステム

 

■実際使用されていた減価スクリップ例(Fig4)

大恐慌時にはオーストリア・ドイツ・米国で減価スクリップが実施され、いずれの場合も成功

・たとえば「ヴェルグルの奇跡」(オーストリア・ヴェルグル町)

・当時は「労働証明書」などと呼ばれていた

・経済環境がデフレの時に特に有効

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Fig4 減価スクリップの一種、「労働証明書」

   (オーストリア・ヴェルグル、1932年)

 

電子マネー化も可能(Fig5)

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Fig5 地域通貨モデルシステム

地域通貨モデルシステム導入検討の手引き」(財団法人地方自治情報センター、H17)などのシステムを導入すれば、減価スクリップの電子マネー化も可能

 

■日本での法的問題は?

・紙幣類似証券取締法

・前払式証票の規制などに関する法律(通称:プリペイドカード法)

出資法

・税法上の扱い

銀行法信託法

 

以上の法的課題は解決済み

 

今はデフレが小康状態ですが、今後の経済環境変化によっては、再びデフレが悪化することも十分考えられます。 地方自治体や商店街などのみなさまでも、転ばぬ先の杖で減価スクリップを検討されてはいかがでしょうか。

 

電子ブック (掲載期間 3月下旬まで)

減価スクリップとは?(v1.1)

http://upload.mediabook.jp/upload/jbook/U70ykL9iXWhlAazCdkMX/

 

 

 

減価スクリップの紹介電子小冊子作りました

 

地方自治体や、商店街向けの「減価スクリップ」紹介電子小冊子を作りました。

 

これから2度にわたって消費税が上がれば、アベノミクスでかなり持ち直してきた景気も腰折れの懸念が出てきます。

 

そこで、一地方自治体でも実施可能な景気対策「減価スクリップ」について紹介した電子小冊子を作りました。

 

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「減価スクリップって何?」(v1.0)

 

安倍政権が強力な経済対策を打ってくれれば良いのですが、まだデフレが続くなか、何といっても5%もの消費税増税インパクトは読めません。

転ばぬ先の杖、今から私達自身が景気対策を考えておいた方が良さそうです。

 

提案しました減価スクリップというのはシェイブテイルの造語です。

敢えて定義するなら「皆が得する減価地域通貨」といったところでしょうか。 

 

2000年代初め、NHKで放送されたエンデ関連番組の影響で減価する地域通貨を試された地方自治体がいくつかありました。 ただ残念なことに、仕組みが事業主など誰かが損をする部分が内包されていたようで、今も減価地域通貨を続けていらっしゃる自治体は殆どないようです。

今回提案の仕組みで大事な点は参加者みんなが得をするシステムだということです

 

中世ヨーロッパに、増税したら国民が裕福になった事例があった

世ヨーロッパで数世紀に渡り発行されていたある種の貨幣では、領主への取り分としての税を増やすことを意図しながら、結果的には領民たちも大変裕福になったようです。

 

貨幣というのはいかにも人工的な存在です。

 

万物は必ず滅びるのに、現代の貨幣には負の利率がなく、永遠に利子を産み増え続けます。

貨幣にこの性質があるために、減るのが当たり前の資源をすり減らして、利子を伴い増え続ける負債を支払う、というの矛盾が発生してしまいます。

 

この貨幣の矛盾について批判的だったイギリスの経済学者、リチャード・ダウスウエイト(Richard Douthwaite)の著書に「貨幣の生態学」という本があります。

 

この著書の中で、神聖ローマ帝国自治領で発行されていたブラクティエート(bracteate)という貨幣について紹介されていました。*1

 


神聖ローマ帝国自治領でブラクティエート(bracteate)という有効期間たった1年の薄い銀合金硬貨が12世紀から15世紀にかけて発行された。
1年後には硬貨は失効し、新硬貨と2から2割5分引きで交換せねばならなかった。

14世紀、ザクセン地方ヨハン2世は36年間に86回も硬貨を変えた。ブラクティエートは1晩で価値の4分の1を失うため人々はできるだけ早くそれを使った。
日常の買い物が済むと残りは住居や資産の改善に使われた。この時期には普通の人々でさえ快適な住居を持つことができ、商人組合は教会に塔や窓あるいは礼拝堂一式を寄付するほど裕福であった。
 
                 f:id:shavetail1:20140305111126j:plain
    図 ブラクティエート(bracteate)の例
          デンマーク  Funen島で発掘されたもの。
 
シェイブテイルとしましては、この逸話は、2500年前の次のようなイソップ物語の裏返しのように感じられます。
 

全財産を金塊に換え、人里離れた所に埋めた男がいた。

しかし、盗まれていないだろうか、と不安でならない。

結局、彼は、こっそり通って掘り返し、無事を確認するのが日課になっていた。

その行動に不審を抱いた近所の悪党が、男の後をつけて、秘密を知ってしまったのである。

次の日、いつものようにやってきた男は、卒倒せんばかりに驚いた。

隠し場所が暴かれ、すべての金塊が盗まれているではないか。

彼は、髪の毛をかきむしり、「もう、生きる希望もない」と、いつまでも悲嘆に暮れている。

ある人が、言った。

「そんなに悲しむのはよしなさい。あなたは、実際は、お金を持っていなかったのと同じなのですから……。お金は、使うためにあるのです。お金があった時も、使わずにしまっておいたじゃないですか。

使わない金塊なら石と同じです。同じ場所に石を埋めて、金だと思ってはどうですか」

 
 
お金って、文字通り 使ってなんぼ、使われてなんぼ、なんですね。
 

 

貨幣の生態学―単一通貨制度の幻想を超えて

貨幣の生態学―単一通貨制度の幻想を超えて

  • 作者: リチャードダウスウェイト,Richard Douthwaite,馬頭忠治,塚田幸三
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大阪府「ぎょうさん買うたろう商品券」の分析

 

少し古いのですが「マネーガイドJP」サイトで、2010年春1ヶ月足らずの期間、大阪府橋下知事の肝いりで実施した地域振興券、「ぎょうさん買うたろう商品券」のまとめが載っています。 減価地域通貨を実施しようとするときに、教訓とすべき経験も含まれているようです。

 

大阪府「ぎょうさん買うたろう商品券」まとめ

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■買うたろう商品券とは?

大阪府が期間限定で販売した、大阪府下の賛同店舗で利用可能な地域振興券の一種。一冊1万円で購入でき、1500円分のクーポンが付いて11500円分の買い物ができる大阪府の橋本知事の肝入りで?作られた「大阪まるごと大売出しキャンペーン事業事務局」が運営母体。

■買うたろう商品券の狙いは?

大阪府景気対策、特に小売業の2.8枯れ(2月と8月は売上げが伸びない)対策が狙い。

■実際の経済効果は?

合計70万冊(70億円分)が販売されたので、総利用額は80億5千万円となる(期限切れなしと換算)。
しかし実際にはスーパーなどで日用品の購入に利用された分も多く、その場合は単なる店舗の割引販売に過ぎず、マイナスの経済効果を生んでいる部分も少なくないと思われる。しかしスーパーではそれすら見込んで、値引きを通常より抑えていると思われる店舗も・・・?
詳しくは「阪神タイガース優勝の経済効果」などで関西ではお馴染みの大阪府立大学宮本勝浩教授の算出を待つべし(^_^;)

■主な仕様

利用可能期間;2010年2月17日~3月11日まで

・販売単位;一冊1万円(1150円の券×10枚綴り、計11500円分の買い物が出来る)

利用の際にお釣りは出ない

・勝手に冊子から切り離した場合は無効となる。必ず、購入時に店舗レジで必要分を切り離してもらう

・利用制限;同キャンペーンに賛同したお店でのみ利用可能

・対象外商品;利用可能店舗でも、以下に該当する商品・サービスの支払いには使えない

(1)出資や債務の支払い(税金、振り込み代金、振り込み手数料、電気・ガス・水道料金など)
(2)有価証券、商品券、ビール券、図書券、通常はがき、切手、印紙、プリペイドカードなどの換金性の高いもの
(3)事業活動に伴って使用する原材料、機器類及び仕入商品等
(4)土地・家屋購入、家賃・地代・駐車料(一時預りを除く)などの不動産に関わる支払い
(5)現金と換金、金融機関への預け入れ
(6)風俗営業などの規制及び義務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条に規定する営業に係る支払い
(7)特定の宗教・政治団体と関わるものや公序良俗に反するもの
(8)ごみ処理を有料化している市町村において、ごみ袋の代金が市町村の手数料に充当されている場合のごみ袋
(9)たばこ

 

■クーポンの仕組みは?

1500円分のクーポンは、500円が大阪府負担で、1000円が実際に購入された店舗の負担となる。

■主な販売店舗

JTB各店舗や大半の大手スーパーで販売。家電量販店ではジョーシンのみ販売

■利用可能店舗

JTB

・家電量販店;ジョーシンミドリ電化ケーズデンキビックカメラ

・大手コンビニ;ローソン、セブンイレブン

・大手スーパー;サティ、オークワ、万代、関西スーパージャスコ、ライフ、イトーヨーカドーイズミヤ、アリオ、など

・百貨店;近鉄百貨店、高島屋、阪急百貨店、阪神百貨店、大丸、など

・ホテル宿泊;リーガロイヤルホテル、帝国ホテル、大阪新阪急ホテル阪急阪神ホテルズ、など

・飲食店チェーン;デニーズ、がんこ、フレンドリー、など

・その他チェーン店;コーナン天牛堺書店メガネの三城ソフトバンクショップ、ドコモショップ、など

*チェーン店舗でも使える店舗と使えない店舗があるケースも・・・。

■問題、課題

・当初の5日間(17~21日)では捌ききれず、追加販売を余儀なくされた準備した70万部のうち18万冊が売れ残り。主要スーパーで販売期限が延長されたり、大阪の一等地である第四ビル前に臨時販売会場が設けられる(25~26日)など、在庫処理に追われる

また処分のために「一人一冊」「大阪府在住者のみ」という本来のルールが変わり、「何冊でもOK」「大阪以外の人でもOK」となるなど、迷走することになった。

結局、当初より2週間近く過ぎた3月5日になってようやく全70万冊が完売となった。原因は主幹事会社のJTBで大量に売れ残りが発生したためとみられる。スーパーでは開店前に長蛇の行列が出来、並んでも購入できない人達も出ていた一方、JTBでは当初から「並ばずに買えた」「一人で何冊も買えた」との報告が多数あった。

また告知が不十分だったことも否めない。関西ローカルの昼のワイドショーでは散々登場したようだが、新聞や夜のニュース番組など全国メディアでの扱いが少なく、一般のサラリーマンやOLなどは、存在自体を知らなかった人も多い筆者も販売開始後にTwitterで知った位だし)。

スーパーなどでは開店前に長蛇の行列ができていたとの報告多数。 しかし、スーパーで日用品の購入に使われても経済効果はほとんどなく店舗の負担が増えるだけ。家電など非日用品であれば、需要先喰いであろうともある程度の経済効果は見込めたのだが。

■店舗毎の対応
仕組み的・金額的に最も需要が見込まれたであろう家電量販店では、店舗毎の対応が大きく分かれた。関西に地盤があるミドリ電化ジョーシンでは利用可能だが、ヨドバシカメラヤマダ電機ソフマップなど関東資本の家電量販店では利用不可。唯一ビックカメラのみは利用可能。

金券・商品券など換金性の高い物品については、予め購入対象外とされていた(転売対策)。しかしたばこが対象外になったのは販売開始後準備不足は否めない。

■大手百貨店でも利用可能とうたっていたが、実際にはブランド品や食料品、修理など大半の商品・サービスが対象外となり、利用価値はほぼ無い状態だった。

実施期間が短すぎる。せめて年度末である3月末まではやるべき。

 

結局は企画→実施までの準備期間が短く、広報等を練られる時間がなかった。

 私達が提唱している減価する地域通貨は使う立場に立てばこの「ぎょうさん買うたろう商品券」の改良版のような捉え方も可能です。 

「ぎょうさん買うたろう商品券」を「シェイブテイルの減価地域通貨」のプロトタイプと見た場合、次のような見習うべき点、そうでない点が浮き彫りとなってきます。

 

見習うべき点

  1. 景気対策という目的の明確化。エコロジーだとか互恵だとかは曖昧すぎる。
  2. 大手企業をたくさんシンパにするため、有力者の後ろ盾を得る必要がある。
  3. まず協賛企業を募り、使える規模を大きくする努力が必要。
  4. 円貨での釣り支払は禁ずる。
  5. 貯金に回すことや、他種の減価しない金券に替えることなども禁ずる。
  6. ビール券・タバコを含め換金性があるものの購入も禁ずる。

 

「他山の石」とすべき点

  1. 一度限りの流通では経済振興効果が弱い。
  2. 消費者購入価と商品価格の差を、「ぎょうさん買うたろう」では地方自治体:販売者が1:2の割合で負担していたが、主催者が差額を負担する仕組みでは永続性に課題がある。
  3. 主催企業には損をする仕組みではないことを理解してもらい、使用可能な商品・サービスを広げてもらうよう要請する。
  4. 通用地域と通用外地域での利便性差に着目し、境界一本隔てれば天地の差が生じる施策は混乱を招くと知る必要がある。
  5. 実施準備期間、実施期間はある程度長くする必要がある。
  6. 広報が重要。地域の期待を集めた上で始められればベスト。

 

経済対策は、その仕組みの出来栄えにより効果は大きく異なってきます。

多種多様な過去の経済対策を分析して、より良い経済対策を考えることが必要でしょう。

 

ヴェルグルの奇跡以前にも「老化するお金」は実験されていた

不勉強な私は、ゲゼル発案の老化するお金の最初の実践はチロル地方のヴェルグル町長によるもの、と思い込んでいました。

「みち」という雑誌の巻頭言を執筆されている天童竺丸氏によれば、ヴェルグル以前に、ドイツで実験されていたとのことです。

世界恐慌に喘いでいたヨーロッパでゲゼルの「老化するお金」の最初の実験となった自由通貨「ヴェーラ」(Wära)には紙幣の裏面に一二の小さな桝が印刷されていて、その空欄に月ごとに額面の一パーセントに相当する額のスタンプを貼るようになっていた。つまり、ヴェルグルの「労働証明書」と同じく、一月に一パーセントずつ価値が減るというお金だったのである。
 ヴェーラはゲゼル理論信奉者だったハンス・ティムとヘルムート・レーディガーによって準備が進められ、ニューヨーク証券取引所のブラック・マンデーによって世界大恐慌が勃発した一九二九年一〇月、まさにその月に誕生した。ヴェーラ交換組合がドイツのエルフルトで設立されたのである。
 ヴェーラ交換組合の組合員はまたたく間に増えて、二年間に一〇〇〇社以上になった。組合員は当時のドイツ帝国のすべての地域に分布していて、その職種は食料品店、パン屋、酪農場、飲食店、自然食品店、肉屋、花屋、床屋、手工業品店、家具店、電機店、自転車屋、各種の工房、印刷所、書店、石炭販売店などさまざまな分野に及んでいた。
●このヴェーラを最初に町ぐるみ採用したのは、実はヴェルグルではない。ドイツのバイエルン地方の石炭鉱山町シュヴァーネンキルヘンだった。恐慌のあおりを受け閉鎖された鉱山の石炭を担保に鉱山主ヘベッカーが一九三一年にヴェーラを発行して鉱山を再開したのである。そして、人口五〇〇人足らずの小さな町に奇跡が起こった。

●ドイツのシュヴァーネンキルヘンにおいても石炭鉱山の労働者に支払われた自由通貨のヴェーラを、当然のことだが地元の商店では受け入れなかった。そこで鉱山主ヘベッカーはみずから鉱山労働者専用の日用雑貨店を開き、品物をヴェーラで売ることにした。
 ここで奇跡が始まる。新しい店には鉱山の従業員だけでなく、それまで他の店で買い物をしていたお客までが殺到したのだ。老化するお金ヴェーラは「素早く回転する」というその本質から、すでに鉱山従業員の手から他の人々の手へとわたっていた。ヴェーラを受け入れてくれる店舗が他にないという事情から、新しい店で買い物をする。
 それまで自由通貨に冷淡だった商店主たちも新しい店の繁盛ぶりを見ると、エルフルトに本部を置くヴェーラ交換組合にドッと押しかけ「われわれにもヴェーラを扱わせてくれ」と申しこむ。多くの企業もヴェーラを受け入れるようになり、周辺の町や村も関心を示す。
当然ながらこの奇跡は、不況に喘ぐドイツで話題になってニュースが全国的に伝えられたのだった。
●その勢いが国境を越えてスイスに拡がり、ヴェルグルでも奇跡を起こしたことは本稿の最初に述べたとおり。
 その「いいことずくめ」のヴェーラがなぜ使用されなくなったのか。ヴェルグルと同様ここで登場するのが「国家による通貨発行権」なのである。ヴェーラの止まることを知らない流通ぶりを、ライヒスマルクに対する脅威と見なしたドイツ帝国銀行は一九三一年一一月、ヴェーラを禁止してしまう。奇跡はわずか数ヶ月しかつづかなかった。
●「国家の通貨発行権」が真に経世済民のためにあるなら、奇跡の経済復興を成し遂げつつある自由通貨というものを座視するはずはなく、まして禁止するはずもない。となれば、ドイツにおいてもスイスにおいても、通貨が経世済民のために発行されていたのではなく、「国家の通貨発行権」に寄生し、これを簒奪した一部の勢力の存在を疑わせるに足りる。
 もしも、敗戦処理の不平等と世界恐慌とに痛めつけられていたドイツ、そしてスイスで、国家通貨によって自由通貨を封殺するのではなく、両者が共存し、さらに進んで国家通貨そのものが自由通貨に倣ってその性格を変えていたとしたら……。
 経世済民のための通貨というものを徹底的に考えて自由通貨を提唱したゲゼルを、英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズも高く評価していた。ヴェーラ禁止の五年後に刊行した『雇用・利子および貨幣の一般理論』(一九三六)の中でケインズはこう述べている。

 こうした改革者たち(シルビオ・ゲゼルやアーヴィング・フィッシャーなど自由通貨の提唱者)は貨幣に持ち越し費用を課すことの中に問題の解決を見てきたのであるが、彼らは正しい途にいたのである。このような解決は法定の支払手段に決まった料金を負担するよう周期的に義務づけるものであろう。……スタンプ貨幣の背後にある理念は健全である。

 そのケインズは生涯最期の奮闘として戦後の国際通貨体制を策定する一九四四年七月に米国ブレトン・ウッズで開かれた国際会議で、「マイナス利子の観念に基づく国際精算同盟」を提案している。ゲゼルの「老化するお金」を国際通貨の決済基準にしようという大胆な提案だった。だが、この提案は葬り去られ、米国の獅子身中の虫たるハリー・デクスター・ホワイトの提案した「市場原理案」が採用され、今日にいたる虚妄のブレトン・ウッズ国際通貨体制が確定したのだった。
●本稿で紹介したように大きな起爆力を秘めていることが実証されている自由通貨を国家通貨と共存ないし合体させることができれば、実体経済からはるかに懸け離れてしまった今日の国際的なカジノ経済を正当な姿にもどすための決定的な秘策となりうるのではないか。「老化するお金」「マイナス利子」という考えは真の経世済民の思想に基づいている、と私には思えるのである。

引用元 :「みち」 (文明地政学協会) 

 みち144号(平成14年07月15日) 自由通貨と国家通貨を合体せよ  

 みち143号(平成14年07月01日) シルビオ・ゲゼル「老化するお金」   

 みち142号(平成14年06月15日) チロルの町ヴェルグルの奇跡

シルビオ・ゲゼルの理論を実行に移せばどの国でもデフレ脱却に向けて動き出すもののようですね。

日本での減価する地域通貨はなぜ上手くいっていないのか

80年前、オーストリア・チロル州のヴェルグルでは大変な経済効果を産み、マスコミが「ヴェルグルの奇跡」と賞賛するだけでなく、アーヴィング・フィッシャー、ケインズらの経済学者らも注目した減価する地域通貨

 

では、当時と同様にデフレの日本では減価する地域通貨というのはひとつもないのでしょうか?

 

もしあるのであれば、同じ減価する地域通貨なのに、80年前のヴェルグルのような瞠目すべき効果が見られないのはなぜなのでしょう。

 

1.日本での減価する地域通貨

実は日本でも幾つもの地域通貨が減価の仕組みを既に取り入れています。

 

1)ガル(地域人口17万人、利用者87人)

北海道・苫小牧市周辺で流通する「ガル」は半年に一度、ガル活性化基金としてプラス残高保有者から残高の5%を削減しています。

 

2)Bee(地域人口100万人、利用者不明)

宮城県仙台市の「Bee」では2ヶ月に2%ずつプラス残高から減価していくシステムを採用しています。

 

3)ピーナッツ(地域人口600万人、利用者620人)

千葉県千葉市周辺の「ピーナッツ」では、四半期ごとに、ポストカード式通帳を回収し、プラス残高に対し1ヶ月あたり1%の手数料を徴収しています。

 

4)YUFU(地域人口12,000人、利用者75人)

大分県湯布院町でのYUFUでは借用証書を、最後に使用した日から3ヶ月以内に使用しないと、最初に発行した人に対して以外には使用できない仕組みとなりました。

 

5)全国レインボーリング(地域人口1.2億人、利用者540人)

全国に会員が広がるレインボーリング(RR)では、参加者の中で、財・サービスの提供を怠り、支払がかさみ、マイナス残高が続く場合には事務局が注意するほか、マイナス限度額を10万Rとしています。

 

6)エッコロ(地域人口700万人、利用者2,000人)

埼玉県のエッコロでは、流通するエッコロを年に1度全て回収し、新たに再発行する仕組みとしています。

 

 2.全員が損をするシステムと得をするシステム

 今ご紹介した減価する地域通貨の中に「ぜひ加入してみたい!」というエキサイティングな仕組みのものはあったでしょうか?

 

これらの減価地域通貨の中では、利用者の対人口比が最高で160人にひとり、最低では22万人にひとりと、「大いに活用されている」とは言い難い状況のようです。

 

 これらに採用されている減価の方式は、運営費用捻出など、本来目的から多少外れた目的を達成する手段として、最初の円貨での参画時点に比べて、通貨を減価させ、参加者に損を強いるシステムとなってしまっています。 

 

「1000円を、900円にする仕組みに加わりませんか?」と勧誘されたら、大半の人々は単に眉をひそめるだけでしょう。

 

それに対し、今私達大阪市とも連携しながら計画している減価する地域通貨(「大阪都構想」に対抗すべく自民党に実施提案した減価紙幣案)は、

760円を1000円に変えましょう。 その1000円が900円などと減価する前に早く使ってしまいましょう。」という考え方です。 

つまり、参加者間で得する大きさに大小はあれど、全員が得をするシステムなんですね。

 

先ほど例に挙げさせていただいた減価通貨システムも、地方自治体の協力(信用の提供)をしてもらえれば、全員が得をするシステムに変身できると思いますがいかがでしょうか。